『太極拳』(タイキョク・ケン)
皆さんご存知の太極拳。しかし一口に“太極拳”と言っても数多くの流派があり、
有名なものだけを挙げても、
“陳式”、“楊式”、“呉式”、“武式”、“孫式”、“簡化(制定)”等が有ります。
“簡化太極拳”以外は全て、創始者の人物の苗字になっています。
日本風に言えば“田中式太極拳”とか“佐藤式”、“鈴木式”なんかになるところでしょうね(笑)。
それら多くの太極拳の成立や各技術特徴などを解説する事が
この記事の目的ではありませんので、(又、それは私の手に余る事ですし。)
早速、“太極拳ってどんなものなのか” について話を進めて行く事にします。
「太極拳は武術なんでしょ?何故ゆっくり動くの?」
という質問をよく受けますが、この答えは至極簡単なもので、
「身体の悪い癖を取り除き、良い癖を身につける為」です。
例えば私達の身体には、“傾く”とか“思わず力む”等といった沢山の悪い癖がありますが、
この“悪い癖”があると、効率的な身体の使い方が出来ないのです。
身体を効率良く使う事が出来ないと、
技が掛かりにくい、動きにムラがでる、破壊力が弱い、反応速度の低下、
等々の弱点を持つ事になってしまいます。
ではその“悪い癖”を直して“良い癖”に変えるにはどうしたら良いのかと言えば、
「正しい動きをゆっくりと、何度も何度も繰り返して」練習すれば良いのです。
お習字を習った事の有る方ならご存知の様に、綺麗な字を身につける為には、
お手本をゆっくりと一画一画丁寧に真似しなければ駄目で、
早く・乱暴にお手本に習っていてはナカナカ良い字が書けるようにはなりません。
それどころか、悪い癖が助長されてしまう事も多いんですね。
武術の動きに関しても同じなんです。
全身に気を配りながら、一つ一つ丁寧に稽古してこそ、正しい動きが身につく訳です。
これが“太極拳がゆっくり動く理由”です。
次に“太極拳の技術特徴”について、簡単に触れてみましょう。
そうですね・・・ 太極拳の技術特徴を一言で述べるならば、
“相手の重心を奪って体勢を崩し、反撃不能な状態にして、こちらの攻撃を入れる”
ですね。
太極拳の練習方法として有名な“推手”は、まさにその練習の一つという訳です。
太極拳ってのは、そういう武術です。
因みに当会では“正宗太極拳”と“陳式太極拳”を学ぶ事が出来ますが、
この二つの太極拳に付いて簡単な説明をします。
★正宗太極拳(セイソウ・タイキョクケン)
楊式太極拳をベースに、比較的近代に成立したものです。
楊式太極拳の中でも“小架式”という、動作の小さい系統から発生しているので、
同じ楊式の大架式をベースに出来あがった簡化太極拳と比べて、動作が緊密です。
後ろ膝を閉めて使うのが一般の太極拳と異なる大きな特徴です。
動作の緩急が少なく、流れに断裂が無く柔らかい事も特徴です。
随所に形意拳の影響が見られるのも、この太極拳の特徴でしょう。
老若男女無理なく取り組め、健康効果が高いです。
九十九の動作から成っており、少し長めなので、憶えるのに少々時間が掛かるのが
難点と言えば難点でしょうか?(笑)
また、自分の学んでいる太極拳を健康体操ではなく武術化したい、
と思っておられる方にも、多くの示唆に富む太極拳です。
★陳式太極拳(チンシキ・タイキョクケン)
太極拳の最も古い形(とされている)で、
跳躍動作や素早い突きなど、武術色を濃く残しています。
楊式系統と異なり、流れに断裂の有るのが特徴ですが、
それだけに力の集中、出し方を覚え易いです。
以上述べた事は、あくまでも私が習った範囲内での事であり、
例えば同じ正宗太極拳でも、教える先生によって内容や注意点が微妙に違いますので、
一概には言えないと言う事を付け加えておきます。
当会では、套路だけでなく基本功や推手、対錬套路、
套路中の技法の対人練習などを通じて、深い太極拳理解を追求しています。